世界政府は必要か?

ブラジルで蝶が羽ばたくと、テキサスで大竜巻が起きる世界

 先日、国際金融協会(IIF)が直近にまとめた、世界の政府・企業、家計の債務残高の数字が出ました。その数字、27000000000000000円(2京7000億円)。これは仮に、1%の金利上昇が起これば、270兆円の利払いが増えることになるということです。だからといって、それに伴い世界経済が破綻する、とはなりません。世界経済はあらゆる要因が蜘蛛の糸のように絡み合ってできおり、直線道路ではないからです。ただ、超マクロ的に見た場合、そういう数字になるのは事実だということを知っておくのは大事です。

 マクロ的な視点で日本を見てみましょう。日銀の総資産が、8月10日時点で2017年度のGDP(548兆6648億円)を上回る548兆9408億円となりました。一見、「総資産が増えてるってのは、つまりは良いことなんだよね?」と思いがちですが、それは要するに、「国債を大量に買い続けている」ということであり、もし金融緩和を終わらせる出口で金利が上昇してしまうと、日銀が保有している資産分だけダメージが大きくなることを意味しています(日本の債務残高は2017年末で対GDP比で224%。ちなみに、米国105%、英国118%)。じゃあ、金融緩和を終わらせなければいいんじゃないの? ということですが、そういうわけにはいかないのです。「金融緩和」とはつまり、日銀が国債を買い上げて市場にお金を流したり、金利を下げて金回りを良くするということですが、金利が低いとお金を借りやすいでしょ? というのが大前提です。でも、それが延々続くとどうなると思います? 人口が減っていく中で、先送りされる借金がどんどん膨らんでいく。それは未来の破局と言ってもいいでしょう。だからこそ出口を開けられずにインフレ懸念に悩まされ、出口を開けられずに、日銀は巨額の損失を発生させることになる未来が見えるのです。だからこそ、日銀の金融緩和政策は永久に続く。黒田総裁は出口に関する質問に対して、「時期尚早である」と連呼していますが、じゃあその時期はいつ来るのだろう? ……来ることはない。自分が仕事を降りるまでその場限りの言動をいつまでも続けるつもりだ、私はそう思います。

 そして読者のassassinsさんが、<次男がアメリカ人、数十人からボイチャで聞いた共通の話があります。彼らは近いうちに2008リーマンよりデカイのが、起きると言ってるそうです。あと、トランプは大嘘こいてるとも。中流階級が減り、仕事もないのがとにかく増えた、とか。見た目はわからないが、フタあけたらアメリカは貧乏な国になった>とコメントしてくれました。

 2008リーマンよりデカイのが、起きる――は私自身もそう思っています。ここで大事なのは誰もが納得できる詳しい話の提示。なので、経済に精通した人のあらゆる分析データが必要になります。で、もしリーマンよりデカイのが来た場合、日本はなす術がないとうことをまずは伝えておきましょう。これは詳細データを用いるまでもなく、誰もがわかります。なぜなら、金利がほぼゼロで来ている日本は、すでに通常の緩和手段が行き詰まっている、ということを意味しているからです。消費者金融で考えればわかりやすいです。借り入れた人間から金利を1%でも取ることができれば、利益は生まれます(ありえないですが、消費者金融が負う全てのコストをゼロとした場合)、でも金利がゼロの場合、たとえ相手が「頼む、困ってるんだ!」と言ったところで、消費者金融はお金を貸すと思いますか? それが今の日本の状態です。

景気拡大に足踏み感が出る

 日銀は3月、6月、9月、12月の年4回、四半期(3ヵ月)ごとに「短観」を発表します。「短観」は正式名称「全国企業短期経済観測調査」と言って、日銀が全国の大企業から中小企業まで約1万社に、最近の景気について聞く調査のことです。日銀が7月2日に発表した6月の短観では、原材料が重荷となって5年半ぶりに2四半期連続で景況感が悪化しました。例えば、石油化学製品を扱うメーカーは原油高がコスト増要因となっています。原油は石油輸出機構(OPEC)とロシアなどの非加盟の主要国による協調減産で在庫が減り、値上がりがしやすい環境になっています。また米国によるイラン産原油の禁輸要請(というなの強制ですけど)の影響もあり、供給が細ります。

 もしイランがブチ切れて、「ホルムズ海峡封鎖」などと言えば、とんでもないことになります。以前、イランはホルムズ海峡の閉鎖を示唆しました。これは北朝鮮が核ミサイルで米国から譲歩を引き出すように、イランにとっての戦略なのです。

 ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾の間にあり、海上輸送される世界の原油の約40%が通過するところです。ホルムズ海峡はペルシャ湾岸諸国の原油が運ばれ、世界の海上輸送原油の3割以上が通る要衝なのです。そのうち8割超がアジア向けとされ、日本が輸入する原油の85%もこの海峡を通るので、ある意味、日本の生命線と言えるでしょう。しかしながら、ペルシャ湾を挟んだカタールやバーレーンには米軍基地があるので、イランが封鎖に乗り出すことはないとされています。ですがそれは、あまりにも楽観的な見方であると思います。

 そしてここの視点が大事。ホルムズ海峡封鎖は中国も懸念しているはずですが、そこには裏の見方もあります。それは、フランス石油大手「トタル」は米政府の対イラン制裁再発動を睨んで、イランにおける開発プロジェクトから撤退すれば、中国最大の国有石油ガス会社・中国石油天然気集団(CNPC)が独り占めするということです。事実、トタルはイランの「南パルス天然ガス田」の開発計画から正式に撤退したと明らかにしました。CNPCが、イランの南パルス天然ガス田の第11フェーズの開発の80.1%のシェアを獲得し、フランスのトタル社に代わって、このプロジェクトの筆頭企業に浮上したことになります。中国はイラン産石油の輸入継続するため、輸送を自国の船舶からイラン国営タンカー会社(NITC)の所有するタンカーに切り替えました。中国は米国との貿易戦争を背景に、米国からの石油輸入への依存を減らしておりながら、しっかりとイラン産石油を確保しているのです。

 原油高はガソリン高に直結します。かつて米国が原油の輸出国だったころは(シェール革命⦅※1⦆により輸出国に転換)、景気や株価にマイナスになりましたが、今はダウ工業株30種平均が原油価格と同様に上昇します。同指標に組み込まれているエクソンモービルやシェブロンなどにとっては良い傾向です。なので、石油メジャーの首領であるロックフェラーにとっては良い傾向なのです。ただし、ここで見誤ってはならないのは、経済には固定されたより良い地点というものがないのです。だからこそ景気の波というものが存在します。ロックフェラーの石油メジャーの株価が上がっても、それは買ってくれる大多数の人間がいるからの話で、原油高のせいで景気が悪くなり、買い手になんらかのマイナス要因が働くと、その影響はそのまま石油メジャーにも波及します。
※1 シェール革命とは、今まで困難であったシェール層からの石油や天然ガス(シェールガス)の抽出が可能になったことにより、世界のエネルギー事情が大きく変わることを指す。(中略)アメリカでは、シェール層が国土のほぼ全域に広がり、そこに埋蔵されている石油や天然ガスは100年分を超えるといわれていることから、世界最大のエネルギー輸入国から2020年ごろには一転資源大国に躍り出ると見られる。Wikiより


 アメリカでシェールガス(「シェール層」という地層から取れる天然ガス)、シェールオイル(同前のオイル)が採掘されるようになって、世界最大のエネルギー資源〝輸入国″だったアメリカは、今や遠い過去の話となりました。アメリカによる突然の勘当宣言(実際には口に出してないですけど)――。おかげで世界のパワーバランスが大きく変わりました。特に天然ガスに関しては749,244百万㎥と、2位のロシア579,392百万㎥を大きく離しています(https://www.globalnote.jp/post-3212.html)。
 
 アメリカは2020年までには、エネルギーの完全自給を達成できると言われています。これはアメリカにとっては喜ぶべきことですが、中東の産油国にとっては、ものすごーく許しがたいこと。世界が必要不可欠とする資源を持っている国の発言力とはとても強いものです。だからこそ産油国(世界一だったサウジアラビア)は堂々とあぐらをかくことができたのです。資源の蛇口を絞めたり緩めたりすることで価格調整が可能だったのです。しかし、アメリカが増産すれば、そんなことは意味なくなります。

 そして原油高の要因には、国際的な原油指標であるWTIのヘッジファンドなど投機筋の影響も考慮しなければなりません。少し前になりますが、投機筋の買い越し幅が約71万6千枚(米商品先物取引委員会(CTFC)まとめ、18年1月23日時点)と1年前と比べて4割以上多いと発表された時がありました。これはおかしいのです。なぜならシェール革命により米国のシェールオイル増産が上値をおさえるのが常だったからです。だからこそ、原油価格は実態とはかけはなれた投機マネーという流動的なものとなっているといえるのです。

 しかしながら今、米国ではシェールオイル増産の勢いが鈍る兆しが出ています。主要鉱区から原油を送り出すパイプラインの能力が限界に迫り、石油掘削装置⦅リグ⦆の稼働数が頭打ちになっていること、トランプが打ち出した輸入鉄鋼25%追加関税のせいで、油井管に使うシームレスパイプの米国内取引価格が値上がりし、コスト高になっているからです。これらはさらなる石油価格上昇の要因となります。

世界経済は頂点に登りつめ、逆流するのか?

 オランダ経済政策分析局によると、4~6月の貿易量は前期比横ばいで、ここ2年続いた右肩上がりの成長が止まったとしました。アジアの半導体需要が一服したとの見方があると同時に、米中貿易戦争の影響も示唆されています。貿易戦争がエスカレートし、関税が高くなるとインフレ要因になります。相乗効果で為替や株価にも影響が及びます。

 ベネズエラではあらゆるものの値段が高騰を続けており、インフレ率は加速、IMFの予測では、年内に1000000%になるかもしれないと言われています。

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画像(※上記の内容とは関係ありません):http://istvan.seesaa.net/article/212152492.html

 同国は通貨単位を5ケタ切り下げるデノミを実施し(現行の100000ボリバルを1ボリバルソベラノと交換。また同国が発行する仮想通貨ペトロとのペッグ制を導入。1ペトロ=3600ボリバルソベラノ)、最低賃金を約35倍に引き上げるとを発表。資金がない中小企業には補助金を支給するとしましたが、原資がない中で通貨の乱造を今後も続けることになります。南の国境を越えてブラジルに逃亡するベネズエラ国民が急増しています。ブラジルだけではありません。エクアドル、ペルー、コロンビアなどもです。

 米中貿易戦争で、上海総合指数が8月20日、かつて人民元を切り下げた際に伴った下落での安値を一時下回りました。もしこの先、元が急落すれば、中国は通貨防衛のためのドル確保へ外貨準備で保有する米国債を売却せざるを得なくなる可能性があります。それは市場の混乱を招き、世界中のマーケットに波及する恐れがあります。

 ETFというものがあります。これはexchange traded fundの略称で、TOPIX(東証株価指数)や日経平均株価、外国の株価指数などの基準になる株式を組み入れて、指数と連動するよう運用される投資信託のことを指します。そのETFは膨張し、4月末の時価総額が4兆9690億ドル(542兆円)と2007年末の5.8倍に増えています。これは2008年のリーマン・ショックで行き場を失ったマネーの受け皿になったからです。ETFは業績の良し悪しに関係なく、指数に入っている銘柄を機械的に買います。つまりそこには、玉石混淆の選別がありません。そして恐ろしいことに、ブラックロック、バンガード、ステート・ストリートだけで全体の7割以上を寡占しているのです。たとえば、もし上場投資信託(ETF)の下値リスクが高まる場面で、リスクヘッジのために売りに出したら、それが逆に市場での売りを加速させるかもしれないのです。潜在的なレバレッジにより危機を増幅させた歴史は過去にあります。

 そして、ここがとてーーーも気持ち悪い。シェール革命の被害者と言われているロシア。国家予算の52%がエネルギー資源に支えられているので、シェール革命はロシアの国家運営に支障を及ぼす。ロシアにとっての生命線である欧州市場を米国に荒らされ、価格決定権まで奪われつつある。つまりは、「米国よ、お前のせいでこっちは大迷惑だ」という話ですが、それでは、ロスチャイルドの子飼いで、トランプの側近、ウィルバー・ロス商務長官と関係の深い海運会社と、プーチンの娘婿や側近2人が実質オーナーの石油化学大手が取引していた事実をどう捉えればいい? その取引額は、2014年から約6800万ドル(約78億円)でした。かつて東京新聞はこう書いてました。「ロシア政府による米大統領選干渉疑惑の捜査が進む中、新たなロシア疑惑はトランプ政権に大きな打撃を与えそうだ」(11月6日付1面)と。果たしてそうでしょうか?

 ロス氏が出資する投資ファンド4社が、経営権を握っている2社のファンドを通じて海運会社「ナビゲーター・ホールディングス」の株3割を保有。ナビ社はプーチンの娘婿シャマロフが役員のロシア石油化学大手「シブール」の輸送業務を請け負っている。シブールの経営陣にはプーチンの側近の実業家ミヘルソン。ちなみに、ミヘルソンはフルネームをレオニード・ミヘルソンと言い、フォーブス誌による長者番付の2016年版でロシア一の富豪と認定された人物です。ここから見えるのは、ウィルバー・ロスを介して、トランプ政権とプーチン政権のどちらにも繋がるということです。

もしも世界の動向が、世界政府待望者たちのシナリオだったら

「朝日新聞」2018/8/25付朝刊15面では、経済学者として超有名なジャック・アタリ氏へのインタビュー記事が載っていました。彼が最近出版した『新世界秩序』では、30年の世界像を描いています。

<世界のGDP総額は現在の2倍になり、地球上の総人口は15%増え、85億人に達します。うち70億人が携帯電話を持っているでしょう。大国はライバルを圧倒するのに手いっぱいで、自国の利益のためだけに立ち回り、市場のグローバル化が国家をのみ込みます。国境を越えた不正行為が増え、麻薬や売春などの犯罪経済が世界のGDPの15%を超えることでしょう。それは破局に直面し、無政府化とカオス化が進んだ世界です>

 彼が言っていること、それは、

1、保護主義が行きすぎると、世界経済は破局へと至る
2、米中の2大国に加え、ロシアやインドなど近未来の大国は、友好国にすら容赦しなくなる

 そして現在の世界情勢と1910年代の類似性も指摘しています。

<10年代は、技術発展の時代でした。エレベーター、ラジオ、自動車、電力など、現在の私たちの生活の基盤を形作るものが続々と発明され、普及しました。これらの技術を背景に、強力なグローバリゼーションが進みました。ロシアや中国などで急激に民主化運動が広がったのもこの時期です。
そして反動が来ました。07年に米国で金融恐慌が起き、14年に第1次世界大戦が始まるまでの間、テロリズムやニヒリズムが広がり、保護主義とナショナリズムが台頭します。そして2度の大戦を経て冷戦が終結に至るまで、75年もの圧迫の時代に世界は突入してしまった。現在も急激な技術発展とグローバリゼーションが進む一方で一国主義や懐古趣味が広がっている。危険な兆候です>

 アタリは世界政府主義者であり、かねてから「エルサレムを世界政府の首都に!」と言ってきた人物です。だからこそ、今回彼が出版した『新世界秩序』で本当に言いたいことは、実はそのことなのだろうと思っています。人間はそれぞれの立場から物事を見、それぞれの立場から正義を論じます。私の立場で言うと、世界政府はもちろん大反対なのですが、その大反対の私ですら、彼らの論理に一考させられてしまうのは、彼らの意見も決して短絡的なものではないからです。

 たとえば、同じように世界政府の必要性を主張した哲学者バートランド・ラッセルがいます。陰謀論の中では、ジョン・コールマン博士の著書により、超超超悪者として指摘された人物です。当初、コールマン博士の主張を鵜呑みにして、ラッセルのことを自ら調べようともしませんでした。のちにラッセルの数々の著書を読むようになって、彼を一概に悪者とは言えないのではないか? と思うようになりました。ひょっとしたら、コールマン博士の陰謀論(ラッセルに関して)に私は見事に踊らされてしまったのではないか? と。

 ラッセルの著書『人類に未来はあるのか?』で彼が伝えたかったのは、「世界政府の必要性」です。

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画像:http://russell-j.com/cool/58T-IDX.HTM

 彼がこの著作を書いた当時は、核による人類の終焉が現実味を持って感じさせられた時代でした。そんな状況下なのに、一般大衆の心にあったものと言えば「どうしようもない」という無力感であり、人々の心は核問題に対して麻痺していたとラッセルは言います。それは、「圧倒的な権力による圧倒的な武力」に為す術がないことを人々が悟ったことへの帰結であったのだと。だからこそ、たとえ一人であっても黙従するのではなく、声をあげ、核廃絶へむけて人々を喚起させる人間が必要だと言ったのです。そうして彼は反核運動に身を投じました(管理人:コールマン博士は原子力に関してど素人で、原発を擁護します。要するに、原発に関して短絡的な発言をしているわけです。それを踏まえると、ラッセル批判にも短絡的な部分があるのではないか? と私は考えるようになり、ラッセルの著書を手にしたのです)。しかし、そう簡単にはいかない現実。戦争は人間性の一部とする者たちは、「自由」という言葉には、生き残るために他一切を侵害する自由もなければならないとします。それが正当化されないのであれば、それはつまり「奴隷」であるというのです。

 このような見解を踏まえラッセルは、であれば、と戦争が起きるのは人間それ自身からであり、他の人々の自由に対して加える暴行を予防する制限が必要であると説きました。自国中心の愛国心が攻撃の自由を求め、人殺しを正義化するのであれば、いっそのこと愛国心が一つになればいい、だからこそラッセルは世界政府の必要性を訴えたのです(管理人:言っていることはまともですよね?)。一つになれば外敵そのものが消滅するという主張はもっともです。しかしそれには問題点も伴います。

 世界政府が性善説として描かれ、もし、旧社会主義国のソ連のような状況に陥いる可能性が書かれていません。政府機関が大きくなればなるほど、一般大衆の意見は反映されにくくなり、専制政治に陥ります(管理人:だから私は世界政府に反対するのです)。数十億人もの多種多様な意見を世界政府の下に集約することは、多種多様の反発が生まれることと表裏一体です。だからこそ、旧ソ連は徹底的に国民を監視してきました。巨大になればなるほど人権は侵害されなければならないのです。そんな社会に賛成できるわけがありませんが、彼の言っていることもよくわかるのです。

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