水道の民営化は、突き詰めると氷河期の到来に辿り着く

はじめに

 先日、オウム幹部らの死刑執行とワールド・カップのニュースに埋もれるかたちで、「水道法改正案」が可決されました。これ、ヤバいんですよ……とその前に、なぜこの法案が通ったのでしょうか? 簡単に言えば、公的セクターが水道事業を担うのでは赤字が解決されない、ということです。水道事業は「人口減による収入減」「水道管の老朽化(※1)」などで、累積赤字が積み重なっているのです。
※1 老朽化が進み40年の耐用年数を超えた水道管の割合は全国の約15%と10年前の2.5倍(「朝日新聞」18/7/13朝刊1面)

 だからこそ民営化でしょ? と(表向きは)なったのです(何年も前から麻生氏は言っていた)。市町村などの経営自体は維持しながら、民間企業に運営権を売却できる仕組みである「コンセッション方式」をとるとのことですが、こういう一見、耳触り良く聞こえる言葉をすぐに妄信してはいけません。たとえば、私だったらこう考えます。

 「もともと累積赤字があるのに、水道料金の現状維持や値下げするのは無理があるっしょ? だから値上げしちゃいますね(※2)。でも、それだけで赤字を解決できるわけがないから、とにかく正社員を減らして非正社員(アルバイト)を増やします。で、それでもダメだったら……わかるでしょ? 税金で補填してくださいな」
※2 ここではまだ言いませんが、料金の値上げは累積赤字だけではなく、水の枯渇問題もあると予測できます。なので実際、企業は自治体が条例で定めた範囲で料金を決めることになっていても、その条例自体が変化することは大いに考慮できるのです。

 そしてこの「コンセッション方式」をとることで、料金の値上げに関してつぎのことが危惧されるのです。

 経営は公的機関であり、運営は民間企業である。これがコンセッション方式。バックに公的機関がいても、運営は独立採算型でおこなわれる。そこで示唆されるのが「フルコスト・プライシング」。2000年に開催された「第2回世界水フォーラム」で提示された概念です。これは、水道事業にかかった費用の全額を消費者から取り戻す、というもので、消費者負担の考えです。つまりは水の採取、浄化、配分、廃水までのすべてのコストをユーザーが支払うということ。この時点で水は公共財ではなく商品になります。市場メカニズムに私たちは翻弄され、その中でも水道料金を払えない貧困層は水の供給網からはじき出されるのです。

民営化での問題は、生命維持装置である水事業に外資が入り込むこと

 山本太郎議員はやはり核心を突きました。彼が麻生大臣に質問したことは、「たとえば、海外の水メジャーが日本に入ってきて、その民営化の一端を担うということがあったとしてもオーケーだと思われますか?」です。原発云々を山本議員に教示した広瀬隆さんのように、それ以外の分野でも、彼に教示している質の高い人物がいることでしょう。もちろん、彼自身の勉強もあるでしょうが。

 この質問に麻生大臣は、「そんな技術ないです、他の国にそんな高い技術ないですから」と答えた……何をおっしゃる? だったら、ウォーター・バロン(水男爵)と呼ばれる大企業の存在が示唆されるわけがない。大企業になるには、大企業になるべくしてなるノウハウがあるからだ。ちなみに、3大水メジャーと言われるのが、「ヴェオリア」「スエズ」「テムズウォーター」です。

 これら企業の仕事のやり方に口出しすることはしません。第一、内部事情は内部の人間にしかわかりませんから。ただし、外部は別です。外部、それは社会的に見て、ということだと思ってください。3大メジャー以外にも水事業をおこなっている企業はあります。ここで一つ例を挙げたい企業が「ベクテル」です。ベクテルは「水道の民営化の失敗例」としてよく登場します。その対象国の一つがボリビアのコチャバンバ市。1999年に水道事業を民営化したのは、深刻な財政難に陥ったからでした。世界銀行からの指導があり、それに従うかたちで水道事業を民営化、そこに参入したベクテルが水道料金を一気に引き上げたのです。そして水道料金は4倍になりました。もちろん、水道料金が支払えない低所得者層は水が飲めません。代わりに汚水を飲んだせいで病気になったケースもあるのです。

 水がやっかいなのは、石油や石炭などの資源と違って代替物がないということです。ミクロ経済学では「代替財」という言葉が使われます。商品Aの価格が高い時、それに取って代わる商品Bのことを差しますが、例えば具体例としてコーヒーと紅茶。コーヒーの価格が高騰したなら、相対的に安価となる紅茶が選択されるということで、需要量がコーヒーから紅茶へと移動するのです。しかし、水の代替財はありません。水は水。水の代わりにビールは代替財とは言えません。だからこそ水は、「ブルー・ゴールド(青く輝く金)」と呼ばれるのです。水は命の危機に直結する。誰が利用しても支払える適正な値段であるべきなのです。

 今や、人口が減って税収が減りつづける国も自治体も、財布に余裕がありません。すでに累積赤字が重くのしかかっています。国としては少しでも財政負担を減らしたいので民営化を推進したい。もちろん、国民にはそんなことは言わない。「民営化すれば、効率的な経営(コスト・パフォーマンス)によって赤字が解消され、かつ市場原理から水の値段が安くなるでしょう」とでも言っておく。しかし、話はそう単純ではありません。まず、国にとっての顧客は国民。同様に民間企業にとっても顧客は国民ですが、考え方は違いますよね。国が守るべきものは国民の命。民間企業が守るべきものは自社の利益。国は国民それ自体が目的。民間企業は国民の財布を通した利益が目的。そう、利益。水道事業を公的セクターが担った方がいいのは、人間の生命に直結するものだからであり、たとえ赤字でも最優先事項となるからです。しかし、民間企業に委託した時点でそれは「儲け」に変貌し、儲けるためならなんでもするようになるのです。なんでも、ってそれはいくらなんでも言い過ぎじゃない? と思った方は、経営難に陥った企業がこれまでどのようなことをしてきたか、の歴史を自分で調べてみてください。山ほどありますから。そして、利益第一主義が向かう先は株主利益や役員報酬。そしてさらなる発展(到達点のない登り階段)を目指すために、稼いだお金をなるべく内部留保に回す。ということは、水道事業のメンテナンスはクレームがでない程度の最小限に留めるかもしれない、と予想することができます。そして、作業自体はなるべくお金のかからないアルバイトにやらせる。さらに、水を必要としない人間はこの世界にはいないので、堅実な投機対象先とみなされ、本来の事業内容とは別のところで株価が上がっていく。

 水道事業はウォーター・バロンだけで世界の約80%を牛耳っていると言われています。これにベクテルなど他数社を含めると(計算はしていないが)、ほとんど寡占状態と言えるでしょう。

水不足の要因、人口爆発

 2055年の世界人口は100億人に達すると言われています。単純に見て、有限の資源という供給に対して、増加の人口という需要があるのです。資源の不足、不足による価格の高騰が誰にでも予測できます。そして100億人口予測年より5年前の2050年、地球の水は枯渇する、とされています。

 それよりさらに前、2030年は世界人口が83億人になる見込ですが、それにともない食糧需要は35%拡大すると言われています。そしてこれを言いたい。食糧の輸入はイコール、水の輸入でもあるのです。なぜか? 食料を輸入しているということは、つまり食料を育てるための水、さらにそれを食べる家畜の食肉を生産するための水を輸入しているということでもあるからです。つまりは、ヴァーチャル・ウォーター(仮想水)のかたちで大量の水を輸入しているということなのです。穀物は1キログラム生産するために約1000リットルの水を必要とすると言われています。牛肉の場合は、1キログラムに対して約16トン。これは家畜の飲み水だけではなく、餌となる穀物を育てるためにも水が必要になるからです。

 仮想水とは、ロンドン大学のトニーアラン教授が思いついた概念で、中東のように水の量が少ない国々では、もし食料を輸入しなければ水不足はより逼迫してしまい、水紛争が起こってしまう。大量の食糧を外国から輸入することで、自国の水資源を節約でき、争いが減った事実がある。つまり、食糧の輸入は、仮想的な水を輸入していることになる、としたわけです。

温暖化から氷河期到来は避けられない

 まず初めに、温暖化の原因は二酸化炭素ではない、と強く指摘しておきます。ここでは一切説明をしませんので、その基礎ともいえる情報を知りたいのであれば、以前私が書いた記事を読んでみてください。http://nikusiminorensa.at.webry.info/201610/article_1.html

 今からだいぶ前、時期は1990年代初め。グリーンランドの巨大な氷床から採取された氷コアの解析がおこなわれました。その中には、過去11万年の気候の変化がはっきりと記録されていたのです。そして、氷に閉じこめられていた古い気泡の分析から、メタンガスの濃度が増加していた時期があったことがわかったのです。メタンは、地球が温暖だった太古の時代の微生物が生成し続けているものと考えられていて、二酸化炭素よりも強力な温室効果ガスとされています。メタンが大気中に放出されれば、地球温暖化が一気に進む恐れがあると言われています(つまり、温暖化は太陽活動の影響なのだが、その影響によって氷床が溶けだし、下(堆積層)に眠るメタンが大量放出されることで、さらなる温暖化を招く可能性がある)。

 2017年1月。南極の棚氷に亀裂が入り、巨大な氷山が海に流れ出す可能性が示唆されました。南極半島の東側にある「ラーセンC棚氷(南極の主要な棚氷で最も北に位置。厚さは約350メートル)」にできた割れ目がそれで、分離すれば5000平方キロメートルの氷が漂流し始めることになると言われていました。で、2017年7月12日、ついに分離したのです。重さ1兆トン、面積は5800平方キロメートル(三重県やバリ島ほどの大きさ)。

 言いたいことは後述します。そしてつぎの記事。こちらは引用します。

南極の氷は、5年前の「3倍速」で消えている──衝撃的な研究の舞台裏

 南極では年間最大2,190億メートルトンの氷が失われている。南極大陸から氷が失われるとき、一体なにが起こるのだろうか。気温は非常に低いので、表面の氷がゆっくりと溶けてなくなることはない。その代わりに、長い間かけて蓄積され、押し潰された巨大な氷が谷に沿ってゆっくりと押し出される。そして最終的には大陸の端に到達し、墓場となる海へと流れ出す。(中略)

 今日では、南極での氷の動きを研究している科学者は人工衛星からのデータを入手できるようになった。このため溢れるほど多くの測定データを手に入れることができる。ある科学者グループがこれを利用して、南極での氷の消失に関する24の異なる調査結果をまとめた論文を、2018年6月13日付けの『Nature』オンライン版に発表した。この論文によると、氷が溶ける速度は過去5年間で「実に3倍になっている」という。(中略)

 英リーズ大学の教授であるアンドルー・シェパードや、米航空宇宙局(NASA)のエリック・アイヴィンズなどが指揮を執ったこの論文によると、氷の消失はいまや年間2,190億メートルトンに上る。研究者は氷流の速度が加速し、棚氷の下部にある海水の温度が上昇しているのが原因だと考えている。(中略)

 今回の論文の推測によると、92年から2011年までの間に、南極では年間760億メートルトンの割合で氷が失われた。その後、この割合は年間2,190億メートルトンに増加しているという。

 この割合が増加していなければ、それほど心配する必要はない。しかし実際には、「南極大陸から海に流れて失われる氷の量の割合は、3倍に増えているのが確認されています」とアイヴィンズは説明する。
この間に失われた氷の量から計算すると、92年以降では「海面が7.6mm上昇した」と推測される。(後略)
https://wired.jp/2018/07/09/antarcticas-stunning-ice-loss/


 これらの事例ではメタンの記述はありませんが、言いたいことはわかりますよね?

メタンだけではない。海流の変化も地球の気候を変える

海洋大循環」という言葉があります。地球規模で循環する海流のことで、海洋の表層で風によって生じる風成循環と、水温や塩分濃度の差によって生じる熱塩循環があります。

 メキシコ湾流(ガルフ・ストリーム)のような海流が、極海域(特に北大西洋グリーンランド沖)に向かうにつれて冷えると海底に向けて沈み込みます。これには塩分濃度が関係していて、塩分を増した水は高密度となるからです。そして沈降した高密度の水は南向きに流れを変え(高密度の海水は深海底に沈む)、赤道を越えて南極大陸(南極海)に達します。そして這うように東へ進むと北上し、北太平洋(千島・アリューシャン列島付近にまで達する)で表層へと上昇するのです。そしてまた向きを変え、今度はインド洋・南大西洋を経て、再びグリーンランド沖へ戻るのです(冷やされた海水が沈み込むことで、南からの暖かい海流が北まで流れてくる。このサイクルが熱塩循環)。周期は約1500~2000年と考えられています。つまり北大西洋の海流が、気候の安定や生態系の維持に大きな影響を与える重要な要因となるのです。

画像

画像:http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/post-b917.html

 そして話は先程のグリーンランドで採取された氷コアに戻らなければなりません。なぜなら、北大西洋の塩分濃度が下がった後に、急に寒冷期が始まったことが解明されたからです。と、読者の方はつぎのように思うはずです。塩分濃度が下がった? なぜ? これには淡水(※3)の急激な増加が関係しているのです。
※3 淡水はイコール真水ということ。地球上の水のおよそ14億㎦の大半は海水で、淡水はわずか2.5%しかない。そのうち約70%が南極・北極の氷河。それ以外は河川や湖沼、地下水。人間が利用できる水は全体の0.01%にすぎない。

 北大西洋が淡水化(淡水が増加)すると、熱塩循環が停止し、これが気候変動をもたらすとされているのです。淡水化すると塩分濃度が低下し、密度が小さくなります。そうすると、海底に向けて沈み込まなくなり、氷結して海氷になってしまうのです。イコール、南に流れを変えずに、いつまでもそこに留まったままになる。つまりは、熱塩循環がストップするのです。で、上記したことを思い出してほしいのです。

淡水はわずか2.5%しかない。そのうち約70%が南極・北極の氷河……
南極の氷は、5年前の3倍速で消えている……


で、私の言いたいこと。海洋大循環の停止による寒冷化……雨が降らなくなる……水不足……。
 
 いろいろと突き詰めて考えた上で、水が枯渇することがわかりましたよね。世界を牛耳るグローバル企業の経営陣はバカですがバカではありません。経営戦略は、「いかに世界の水をコントロールするか」になるのです。

この記事へのコメント

assassins
2018年07月15日 20:02
日本で水道料金がバカ値上げになったら…払えない人もいるだろう。…お婆さんは川へ洗濯へ…昔話か(´Д` )
値上げされても、またまたまたまた我慢我慢⁈
我慢は美徳じゃないよね。
LUNA
2018年07月18日 18:39
すごく遅くなりました(-_-)
昼間と夜のバイトが、早出とか残業が重なり、疲れました。
明日必ず来ますね、ごめんなさい(^^;;
LUNA
2018年07月19日 09:05
民営化。儲けが一番という事。

異常な猛暑でクタクタ…本当に、何か使ってあぶってるんじゃないかって疑います。片方は水害、片方はあぶりだし(-_-)
片方いじるからもう片方にしわ寄せでしょうか。

食糧とエネルギーは大切ですね。その食糧も水がなきゃ育たない。温暖化は寒冷化への道筋、まるでデイ アフター トゥモローの映画のまんまです。
assassins
2018年07月19日 17:07
LUNAさん、忙しかったんですね(´Д` )
もっすごい暑さなので、要注意です。ガンジーさんも要注意ですよ‼︎

ようやく回復したウサたん、また病気((((;゚Д゚)))))))
膀胱炎のようで、尿の培養をしてる最中です。
培養してどの菌がどれくらいいるかで、投薬方法を変えるみたいです。看病と仕事でヘロヘロ~
なんで次々と病気にっ((((;゚Д゚)))))))
LUNA
2018年07月23日 07:22
美ウサギ。その後いかがでしょうか。
病院すごくお金かかりますよね(-_-)病院側の井伊ねだし。看病も大変、頑張れp(^-^)q
LUNA
2018年07月23日 07:25
ネットで写真を見ましたが、ヴェオリアが水道料金の検針をやってる地域がありました。
その写真は、渋谷あたりだったと記憶にあります。水道料金の紙の裏に社名が書いてありましたよ。民営化とかの前にもぅ食いこんできてますね。渋谷だけでなく、いくつかの地域に社名があったのを写真で見ました。
assassins
2018年07月23日 13:57
昔、テムズ川や江戸の川が凍った時代がありましたね。ミニ氷河期だったとか。

それにしても、あぶるあぶる、あぶり過ぎ(´Д` )
台風だらけかと思いきや、猛暑に。
LUNA
2018年07月26日 11:26
人口増加は、確かに問題だと思います。減る一方の日本、増える一方の国。
日本では人口削減がかなり進んで効果抜群といった感じ。
人口増加に打つ手なしなのですか?! 減らせって言うと勘違いされちゃいますが、100億とかはマズイんじゃないかと思って。