発言、行動、顔、そして嗜好も(思考も)、そのすべてが把握される ~監視編③~

すべてを見通す力

 あらゆるものがネットにつながる「IoT時代」が到来し、監視はいっそう強化されることでしょう。自由か安全か、の問いは、左翼か右翼か、の問いと同じ類で、ヘーゲルの弁証法を用いた支配テクニックです。

 元米国家情報長官ジェームズ・クラッパーが、IoT技術を使って身元確認、位置追跡、監視などが行われることを示唆していました。

 キューバには「青年の島(スペイン語:Isla de la Juventud)」と呼ばれる島があります。キューバ本島を除いては最も大きい島で、特別自治区として中央政府によって直接統治されています。

 その島でかつて機能していたのが「プレシディオ・モデーロ刑務所」。典型的な「パノプティコン」型の刑務所として知られていました。……パノプティコンとは何か? 日本語訳すればそれは「全展望監視システム」。英哲学者ジェレミ・ベンサムが設計した刑務所の構想です。

 ベンサムはこう思っていました。

犯罪者を恒常的な監視下におけば、彼らに生産的労働習慣を身につけさせられる

 パノプティコンは、円形に配置された収容者の個室が多層式看守塔に面するよう設計されていて、収容者たちにはお互いの姿や看守が見えない一方、看守はその位置からすべての収容者を監視することができます。収容者にとっては、いつ看守に監視されているのかわからない、という状況なのです。看守は収容者に対して一方的な権力作用を働きかけられるのです。だからこそ収容者は、常に監視されていることを意識してしまい、自ら犬(従順)になるのです。

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画像:http://www.gogo-ts.jp/tokimekiblog/2016/8707/

 で、言いたいことは、たぶん皆さんわかっていると思います。これは現在の世界の在り方です。

パノプティコンの先陣を切っているのは中国だ

 中国版LINE「微信」は、利用者の情報を当局に送信する規約への同意が必要不可欠。ネットは政府の支配下にあり、万里の長城になぞらえ、「グレート・ファイアウォール」と呼ばれています。やはり、共産主義という全体主義には必要なのです、管理することが……。

 中国のアリババは、AIで都市をまさに管理するプロジェクト「シティブレイン」をマレーシアの首都クアラルンプールに展開しようとしています。中国が目指しているのは、あらゆる街がスマートシティになり、すべてのインフラが何らかのソフトウェアにつながる世界。

 すべての人間、そのすべての人間の情報を管理統制する。クラウドベースのシステムを構築する。もちろん、管理者はAI。

 中国は2035年に作り上げようとしている未来都市は、乗用車をすべて自動運転にし、共産党がすべてを取り仕切る。その未来都市「雄安新区」は「千年の大計画」として昨年発表した壮大なプロジェクトです。北京から南西約100キロの河北省の農村がその場所。22年に基礎インフラを整え、東京都に匹敵する広さをもつ。将来人口は200万人以上を見込み、2兆元(約35兆円)をかける。

 準備段階として何が必要か? それは上記した内容を読めばもちろんわかりますが(ビッグデータ)、最重要なことは、管理できること(誰も反対、反抗できない状況)です。だからこそ必要なのです、パノプティコンが。中国は顔認識をスタートさせ、その中国に世界各国が倣い、顔認証システムを導入し始めています。マレーシア、エチオピア、ケニア、ブラジル……。

 全国民を3秒以内で認識する国家規模のデータベースの稼働に向けて動いおり、そのために、すでに1億7000万台の監視カメラがありますが、政府は2020年までにその数を3倍以上にしようとしています。国民2人に1台の監視カメラ……。

 18年6月11日の『WIRED(US)』の記事によると、中国南西部の貴州省貴陽市で12月に実施された運用試験では、警察当局がデータベースに英BBCの記者の顔写真を登録すると、システムは人口430万人の都市をくまなくスキャンし、わずか7分で当人を見つけ出したと言います。

 科学技術は日進月歩し、先日、数多くのメディアが、中国がハイテク眼鏡(サングラス)を警察に導入している、と報じました。相手の顔を見ると即座に警察のデータベースと照合、容疑者の疑いがあると警告音が鳴ります。2メートル先の空間にはディスプレイが浮かぶ。まさにSFの世界の具現化。広東省のある都市では、横断歩道に備えつけられた監視カメラが、信号無視した人間を顔認証で身元を割り出すと、その情報がサングラス(現場のディスプレイ)に映し出されます。

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画像:http://www.1242.com/lf/articles/90774/?cat=politics_economy&pg=asa

米国も顔認識に取り掛かっている

米警察が犯罪捜査に使っているのは、アマゾンの顔認識技術。これは警察側がアマゾン(以外の企業からも)から技術を購入したものです。犯罪を取り締まる側の警察、警察が顔認識技術を駆使して勝手に個人を調べても、現段階ではなんら法律に抵触しません。

 これは、アメリカ自由人権協会(ACLU)が明らかにしたもので、アマゾンがリアルタイムで人の顔を認識するアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の技術「Rekognition(レコグニション)」を警察に販売していたのです。この団体に付随するように数十の民間団体が声を上げ、アマゾンのCEOであるジェフ・ベゾスに対して、警察に顔認識技術を販売しないように要請する書簡を出しました。

 ACLUによると、フロリダ州オーランドおよびオレゴン州ワシントンの警察が監視システムでRekognitionを使っているといいます。

 アマゾンは2016年にAWSの一部としてRekognitionを導入。照合アルゴリズムで、AWSのサーバーに保存された画像にタグ付けすることで、Rekognitionに個人を特定するよう教え込むことができ、さらには他の画像や映像をスキャンさせ、特定の人を検知するのにも利用できます。顔認識技術の精度は、こうやってデータ収集するにつれて向上するのです(Rekognitionは1枚の画像で最大100人まで特定できる。また、大勢の人や公共の場所のストリーミング映像からリアルタイムで人の動きを追跡できる)。
 
 ACLUが危惧していることは、Rekognition技術によって移民と政治活動家が標的にされる可能性

 そしてその標的のみならず、怖いのは、この技術がゲノム・データ分析と結びついた時です

ゲノム・データ分析に関する考えられる可能性

 皆さん知っていますか? 今現在、特定の人物を狙う「オーダーメイド殺人ウイルス」をつくることが可能だということを。

 ゲノム編集という革命的テクノロジーのおかげで、生物学は劇的に変化しました。この技術では、特殊なたんぱく質を利用し、DNAを精密にカット&ペーストします。たんぱく質には3種類「ZFN」「TALEN」「CRISPR」ありますが、最も注目されているのがCRISPRです。

 ゲノム(全遺伝情報)は一人ひとり違いますが、人種や民族、同じ先祖をもつ親族や家族など、特定の属性の人だけが共通してもつ配列は含まれます。ゲノム・データは本来、オーダーメイド医療に役立つとされ、脚光を浴びていますがその一方、膨大なゲノム・データを分析し、標的とする配列が定まれば、特定の人物や集団を狙った生物兵器に転用できると言われているのです。ここで重要なのは、何も考えることなくウイルスを大量にばら撒いたとしても、狙った配列以外の人間には何も起きないということ。それはつまり、狙った配列の人間だけを標的にできる、ということなのです。

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画像:https://wired.jp/2018/02/04/whats-next-for-crispr/

 たとえばの話、アメリカのあるコンサート会場にいる日本人だけを殺害したい場合、空調からウイルスを散布すれば、それだけで正確に仕事を終えることができるのです。

 米国立保健研究所(NIH)によると、1人分のゲノムの解読費用は、2001年の9500万ドル(約104億円)から、17年には1100ドル(約12万)と、猛烈な勢いで価格が下がってきています。

最終管理形態「人体埋め込みマイクロチップ」はいずれ普通になる

 昨年の夏、ある米国企業が従業員の体内へマイクロチップの埋め込みを実施したことがニュースになりました。ある企業とは「Three Square Market」、ウィスコンシン州の自動販売機メーカー。マイクロチップを手に埋め込んだ従業員が手をかざし、オフィスの出入り口を解錠、または社内の自動販売機でジュースを購入する。50名以上の従業員がマイクロチップの埋め込みに同意……。

 埋めこみは簡単。注射器を使い、米粒くらいのRFIDチップを右手の親指と人差し指の間の皮下に入れる。チップ内のデータは暗号化されているので大丈夫とのこと。ハッキングされることをまるで考えていないかのような印象。いやー、よくわかりますよ。便利ですもんね――っと失笑にしかならない。

 政府だけではなく、業界、つまりは企業群も恐ろしく無謬性にとらわれています。無謬性とは、「失敗したときのことを考えたり議論したりしない」という信念。「そんなことをいちいち考えていたら、仕事が前に進まない」との概念。だからハッキングのことなど考えない。ハッキングされたら、そのときに対応策を考えればいいだけの話、っと思っている。

 同社のCEOであるTodd Westby氏は、将来的にこの技術は標準化されると、クレジットカードや携帯電話による決済が不要になると示唆しています。

 問題はここからです。クレジットカードや携帯電話による決済は、概念として預金口座との連動が土台としてあります。しかし昨今、仮想通貨がおそろしく台頭していきる状況を勘案すると、マイクロチップ➡仮想通貨との連動、がいずれ一般化されることでしょう。それを示唆するようなことがすでに起きています。
ビットコインの情報を保存するNFCチップを両手に埋め込む手術を行ったのは、オランダ人の起業家マルタイン・ビスメイヤー氏を含む数名の男女。暗号化されたビットコインのプライベートキーが保存されています。

 オンライン上のデータとして存在する仮想通貨は実体を持ちません。たんなるデジタル・データにすぎないのです。だからこそ、データの管理が最重要となります。コールドウォレットという方法でネット上に情報を置かないことが常識になっています。

 580億円分もの巨額の顧客資産流出が起きた仮想通貨取引所「コインチェック」のニュースが報じられたのを覚えていますでしょうか? コインチェックが仮想通貨「NEM:New Economy Movement(新しい経済運動)」を流出させた原因の一つが、ネットワークに常時接続しているホットウォレットでの管理のせいでした。

 でも、思うのです。たとえネットワークに接続していなくても、電子部品に変わりはありません。マイクロチップについて言えば、一度体内に埋込むと、脱落したり、消失することはほとんどなく、データが書きかえられることもない、リーダーから発信される電波を利用して、データ電波を発信するため、電池が不要で、半永久的に使用できる(スウェーデンに所在する国営鉄道会社であるSJは、マイクロチップによる料金の精算方式を採用している。乗客の手を車掌がスキャンすることによって、その料金を精算する)

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画像:https://www.businessinsider.jp/post-34515

 と謳われますが、それでも電子部品です。わかりますよね? 電子部品なのです。以前の北朝鮮に関する記事で言いました。「ありえないようでありえる話、北朝鮮の電磁パルス攻撃は? だからこそデジタル・データは怖いのです」と。

 日本のキャッシュレス決済比率が18%程度に対して、韓国は90%に迫る勢い。2020年には、東京オリンピックが開催されるということで、キャッシュレス比率を高めようと政府は考えています。当初の2027年のキャッシュレス比率40%を2年前倒しして、2025年までに実現させる目標です。スマホ決済がそれを担うでしょうが、最初は地ならしとしてQRコードからいくはずです。そして利用者が気にもかけない個人データ(いつ、どこで、誰が、何を、いくらで購入したか?)が事業者に集積されます。これは個人の生活パターンを把握することであり、脳をハッキングされることと同等です。なぜなら、AIによってソーシャルCRM(ソーシャルメディア上で、顧客とコミュニケーションを取ることで顧客の満足度や好感度を高め、企業のイメージアップや購買につなげる手法)技法で顧客特性を分析されるからです。

 そして来る日が来るのです。「いやー、QR決済ってめんどくさいよね。やっぱマイクロチップでしょ!」と。

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